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オフィスは無くなるのか?

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コンサルタントコラム 

2024.12.26

オフィスイメージ
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強制的にリモートワークへの移行を余儀なくされた日本企業

弊社コラム「サテライトオフィスだと何が変わるの」に続き、今回もまた日本の「ワークスタイル」について考えていきたいと思います。弊社では在宅ワークの導入の他にも、サテライトオフィスやトレーラーハウスといった働き方への様々な取り組みを独自で行なっている。
日本では以前から働き方改革の一環としてテレワークの導入が叫ばれていましたが、なかなか日本企業には浸透しませんでした。ところが新型コロナウイルスの感染拡大から外出自粛の要請が出た2020年3月頃、企業は半ば強引に在宅ワークに移行をしました。前コラムの「サテライトオフィスだと何が変わるの」でもあるように「誰も困らなかった」と言うのが大多数の意見ではないだろうか。弊社の社員も在宅ワークにすっかり慣れ、今後もそのワークスタイルは継続していく予定です。さらに弊社では実際にサテライトオフィスを活用したワーケーションも導入し、プロトタイプでの働き方から一線を画し、場所に縛られない楽しい働き方を実践している。
こうなったときに元来のオフィスはどのような役割を果たすのでしょうか。今回はオフィスの活用について深掘りしていきたいと思います。本来オフィスは仕事をするための場所として当たり前のように存在していました。しかし、家の中に仕事を持ち込むことに成功してしまった、あるいはそれを余儀なくされた私たちは今後必ずしも仕事をオフィスでする必要があるのか、と言うことを考えてしまう。私たちにはもうオフィスという場所自体が必要ないのか。
 

オフィスの存在価値はもう無い?

働くときにオフィス空間は必要なのでしょうか。働く中で「社員が一箇所に集結して仕事をする」という必要はあるのでしょうか。
この問いに私は必ずしもオフィスは必要ではないと考える。”業務を遂行する”という点で、オフィス空間は職種によっては必ずしも必要不可欠なものではない。
実際に株式会社ソニックガーデンという会社は「本社オフィスを撤廃した全社員リモートワーク」のシステムをとっている。この会社はwebシステムやスマートフォンアプリなどを開発する中小企業であり、事業に欠かせないソフトウェアの企画運営を行なっている。
代表である倉貫さんは、全社員テレワークにした第一の理由として”勤務地不問”の採用条件をつけ、優秀な人材を場所に関わらず採用可能にしたことを挙げる。バーチャルオフィスやビデオ会議の活用によって、同じ場所にいなくても意思の疎通や情報の共有が可能であり、2022年現在ですでに空間を超えた働き方が可能になっています。オフィス空間には「働くための出社しなくてはならない場所」という概念は無くなりました。そんな中で、オフィス空間は今後どういった意味において存在をするべきなのだろうか。 
 

オフィスにも個性が求められる時代に

私はこれからのオフィス空間はこれまでの役割から逸脱したものになる、オフィスは”企業を象徴する顔”としての役割を担っていくのではないかと推測している。会社がその企業の唯一無二の場所、になるとことで、もはやオフィス空間のプロトタイプというものは消滅し、企業のスタイルに合わせて180度変動していくだろう。今までオフィスのイメージは、グレーの床の上に長机を敷き詰め、そこに社員を向かい合わせた形で配置するといった、いかに極力狭い面積に社員を詰め込めるかということを決めればよかった。しかしこういったいわゆる”詰め込み型”のオフィスはもう何年もすればなくなるだろう。オフィス空間が今後も存在を続けていくためには、クライアントにとっての信頼感や企業の独自性を反映させるブランディングや社員がわざわざ出勤をしたくなるような付加価値が重要になってくると考えています。

オフィスに行くという付加価値とは

私たちがオフィスに行きたくなる付加価値とは何でしょうか。その場所にいると自然と生産性が上がり、その居心地の良さから楽しく働くことができるのが大切なことだと思います。それは業種や会社によって様々であり、今後はその付加価値を見つけ出していき、オフィス空間に反映していくことが働く場づくりの中で大切になっていくように考える。
ではここで実際の事例を見ていきたい。アウトドアブランドとして有名な株式会社スノーピークではオフィスの中がすでにアウトドアのブランドショールームとなっている。このオフィスのすごい点は「オフィスに行くことの付加価値」が社員とクライアントの双方に当てはまるということだ。
社員にとって、スノーピークのオフィスは企業としてのビジョンの可視化であったり、仕事のモチベーションや作業効率の向上に繋がっている。実際に対面しながら働くことによって、雑談によるリラックス効果やそれによる偶発的なアイデアが生まれたりするなど、やはりオフィスに集まって働くことで働き方への付加価値が創出できると考えられる。
一方クライアント目線になった際も、このオフィスは十分な役割を果たしている。働く場というよりも空間をショールームとして活用しているため、商談にきた際に実際に商品に触れ、試してみることが可能だ。デジタル空間ではなし得ない、五感の体験により空間のある意味として大きな効果を発揮する。またスノーピークでは、オフィス見学として、キャンピングオフィス体験や焚き火疑似体験、室内テントミーティング体験などオフィスを用いた外に向けたキャンペーン企画を積極的に行っている。自ら新しい働き方を実践し、それを外に発信しブランディング化していくことで、他社にも”キャンピングオフィス”と題した解放感のあるオフィス空間を創る事業も行なっている。
オフィス空間に企業の色や理念を反映していくことで、社員と顧客双方へのイメージをより明確にしていくことができるのだ。

それぞれのスタイルの働き方

これからのオフィスは、”働くための場所”なのではなく、”企業を発信する一拠点”として活用されていくべきなのではないだろうか。仮に飲食店の会社なのであれば、キッチンを中心に配置したレイアウトで試作品などを外から見えるようにし、商品の作られ方や食品に対する思いなど、企業の中身を見せた働き方ができる。また、仮にゲーム会社のオフィスならば実際に社員たちがゲームを楽しみながら働いている様子や、外部からの期待を煽るような見せ方で顧客の獲得や社員がわざわざ出社したくなるようなオフィスを空間から創造してくことが可能なのではないか。
これらはほんの一例であるが、今後のオフィス空間はプロトタイプを持たず、企業によって全く別のものに変化していくと考えている。
弊社ではすでに新しい働き方の試みとして、トレーラーハウスを活用した”場所に縛られないワークスタイル“を実践している。私たちが叶えたい場所に縛られない新しい働き方を自らで実践し、その様子を発信していく。今後、企業によってオフィス空間が様々な視点から自由度の高い空間に変化していく中で、どのようなソリューションが選択されていくのか楽しみにしていきたいと思う。

ライター:小貫 信比古

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