eスポーツのプロ選手は、C. ロナウドを超えるのか
2019.03.11
最近話題のeスポーツとは?
eスポーツは「electronic sports」の略で、個人やチームによるコンピューターゲームでの対戦を競技やスポーツとしてとらえる際の名称だ。最近、国内メディアでこのeスポーツが取り上げられることが多い。平昌オリンピック公認のeスポーツ大会や、アジア競技大会でデモストレーション競技として開催された大会が、ニュースでよく取り上げられた。IOCによる、2024年パリオリンピックでのeスポーツ正式種目化の検討の発表も話題になった。
報道では、eスポーツ大会の会場の盛り上がり状況や高額な賞金に加え、プロ選手として活躍する日本人の存在や、彼の経歴および獲得した賞金がよく取り上げられている。eスポーツはあたかも新しいトレンドで、これからプロ選手が増え、日本人のスタープレーヤーの誕生も期待出来るような調子で報じられているが、本当だろうか?
eスポーツのプロ選手になるのは魅力的か?
2018年現在の世界のゲーム市場は15兆円、ゲーム人口は23億人と言われている。その中で、eスポーツの世界市場は700億円、eスポーツの視聴者は3.35億人程度と試算されている。2021年には、それぞれ1756億円、5.57億人になるとされており、その伸び率の高さは注目に値するが、それでもゲーム人口に対してeスポーツの視聴者が少なすぎる感が否めない。
例えば、サッカーは競技人口が世界で2.5億人と言われているが、ワールドカップだけでも視聴者は300億人にも上る。この莫大な視聴者数が、あらゆる業界からのスポンサーを呼び寄せ、結果として大きな経済効果を生み出す興行が成立する。サッカーのスタープレーヤーに数十億もの年収が支払われるのは極めて合理的と言える。
一方で、eスポーツのプロ選手の収入は、世界トップのプレーヤーでも年収1億円程度。日本人のトッププレーヤーは1,000万円程度と推定されており、これは日本人が得意とするゲームカテゴリーの特殊性が主な要因と言われている。
また、eスポーツのプロ選手は、選手生命が極めて短いと言われている。23億人というゲーム人口を考えると、プロ選手になれる確率は相当低いことに加え、トップ選手になれたとしてもメジャースポーツの選手ほど稼げる可能性が低いこと、そして、プロ選手として活躍できる年数が他の競技に比べて短いことから、eスポーツのプロ選手を目指すことは、少なくとも現時点では、リスクに見合う合理的なリターンが得られるチャレンジとは言いがたい。
eスポーツはメジャー化できるのか?
サッカーやバスケットボールのスター選手のように、年収で数十億も稼げるようなeスポーツのプロ選手を生み出すには、eスポーツは、普段ゲームをしない人も含めて広く様々な人々に熱心に視聴されるようになる必要がある。しかしながら、現状のeスポーツのコンテンツは、生身の人間が真剣勝負で戦うスポーツの映像に比べ、その競技をやらない人までも熱くする要素に本質的に欠けている。この点を克服しない限り、eスポーツはいつまでも一部の熱心なファンしか見ないコンテンツであり続け、メジャースポーツのように大きな興行を打てるスポーツにはなれないと考える。
eスポーツを次世代のメジャースポーツにするためにも、また、eスポーツで活躍することを目指している方々の夢を壊さないためにも、eスポーツに関わるゲーム制作会社やイベント会社は、ゲームをやらない人でも見たいと思うようなコンテンツのあり方を探求すべきではないか。VRやARを始めとした最新テクノロジーを取り込むなど、デジタルコンテンツならではの魅力度アップにつながるチャレンジを積極的に試行して頂きたい。